馬鹿は死ななきゃ治らない
虹村 凌
そんなに長く無いよなきっと
なんて笑いながら
まだまだ続くであろう長く横たわる俺のこの先の人生みたいなのについて考える
結婚とか老後とか何だかそんな事を言いながら貯金をする同級生を横目に
素敵な学歴をぶら下げた俺は未だに時給900円と言う過去7年間から抜け出せず
惰性で8年目に突入しようとしている
周囲は既に社会人数年目で
もはや俺は人より一回多い学園祭気分どころじゃない
モノリスになりたいと嗤いながら
煙草の火で何かを焼き切る
何を焼き切ったのか
仕切り直せた事なんか無い
うやむやにしていただけだ
そんな事にはとっくに気付いている。
気付いていたってどうしようも出来ない
頭が悪いとかそういう事じゃなく
何がどう何時からうやむやになったのかも
わからないだけだ
ひとつずつ順を追えばきっと大丈夫
だから安心しきって眠る
ひとつずつ順を追えばきっと大丈夫
だから明け方までにはケリがつく
そう思って何度夜をやり過ごそうとしただろうか
朝がくれば何とかなる
日の出まで待てば何とかなる
そう言いながら
突っ張り通せなかった分
物わかりの良い小利口のフリをして逃げ延びた
そんな奴じゃなかった筈だったけどそんな奴になった
最初からそんな奴だった気もする
卑怯と呼ぶのか作戦と呼ぶのか
耳は何時までたっても日曜日にはならないフリ
月明かりに濡れた操車場も人気の無い工事現場の駐車場にも行かなかった
夜の金網も越えずハックルベリーにも会わなかった
明日を垂直に考える事も無く
何度も眠るのだ
朝まで待てば何とかなると
ケリがつくだろうと
そう期待して眠る
殺したくなるような夕暮れの色みたいな日々
あの頃に夢見た立派な大人にはなれなかった
それでもあの頃に輝いて見えた七色の未来の一つのうちのどれかなのだろう
信じるとか信じないとか勝ち負けとか
そういうものからかけ離れていまここにいる
上に離れているのか下に離れているのか
横に離れているのか
その真ん中なのかもわからない
何かに追いつめられて行く感覚
逃げたい
遠くに逃げたあいつのようにしがらみが嫌でつるむ事を避けてどこか遠くへ
生きるとか愛とか全然わからないし
戦うとか優しさとか全然わからない
何も答えが出ていない事に対する焦燥感
10年前を若かったと笑える感覚と笑えない感覚
たった25年
じりじりと焼けただれた卑怯さを身にまとい
どうにかこうにか笑う
俺は上手く笑えているのか
馬鹿になりてぇ
馬鹿になりたくねぇ
中途半端に疲れっちまったけど
俺は俺を信じてやれねぇよ
もう抵抗も出来ない
緩やかに迎合する一方だ
どんどん格好悪くなる
どんどん丸くなっていく
こうやってだらしないギャグをぶら下げて
俺みたいな顔した奴が嗤っていやがる