寒くはない
あおば

                 101227



実りある時を
稼ぎ時と思いたい
足し算に飽きたサイコロ
賭博に手を出して
痛い目に遭うこともあり
さいの目に切り刻んだ膾を呑み込み
目を白黒させた記憶を鮮やかにする
新しいメディアが登場する度に息を吹き返す子供たち
100円玉をしっかり握り
横町の駄菓子屋に駆け込んだのはいつの時のことか
時間がないと
菓子パンを無理矢理ミネラルウォーターで流し込みながら
ひょいと横目を使うと
ホットパンツの女子がつくねんとキィボードを叩いている
年末もあと何日か
銀行が開いている限り休めないと
疲れの色を隠しようもない人たちが
ぐい飲みをする度に
アルコールの評価が高まり
菓子パンの立場は危うくなる
設備投資が無駄になった工場の外れに
使い道の無くなった半製品がうずたかく積まれ
コンテナでどこかに運ぶ
パン好きな大型トラックの運転士は
パンの家を建てたいと夢想している
しかし現状では
国内の設備投資は困難だとテレビは語る
上から目線の声に
国内のテレビを廃止すれば少しは消費材の需要が増すのではないかと思いながら
パソコンの電源は落とせない
ご当地アイドルの元気な姿に見とれ
少し情けない年末の時間節約の工夫を考える
寒くはないが
元気がでない
どこからか
習慣性の健忘症を叩きのめす音がして
耐用年数を超えた家もきれいになって
あけおめの新年を迎えるのですが
その時、キィーと
ドアが自然に開くのは
不思議でもなんでもありません
風が通り過ぎる作用でございますと
郵便箱の上に丁寧な女文字で認めてありました








「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、植田博喜さん。



自由詩 寒くはない Copyright あおば 2010-12-27 23:50:36
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