キャッチボール
アラガイs
白い球はカーブを描き
握り損ねた手
ほら
頭上を、空高く飛び越え
砂原を駆け上がり
野を越え 谷を下り 
小川をながれて
目のまえのどぶ板に 隠れると   
あなたは道を横切りしゃがみ込む
追い回された牛皮の匂いと小さな記憶の膜 
遠い 遠い…   
…遠い 
空き地に捨てられた 
白い球が  
ころころと 
遮る盛り土は電線や突然の 
雨 / 雨  // 
/////  雨に  
一ページするる一ページと
破れた漫画の断片が風に煽られたそれは
なんでもかんでもが、丸い球だった
庭を駆けてゆく
あなたの綴じた瞼は吸い込まれ
「バシッ」とミットを揺らす 
受けとめた手のひらの感触に
ことばを探す遺影の
ほら
「ど真ん中に」
あの宙を飛ぶ白い球が
指の先、手のひらからこぼれて
なつかしく語りかけてきます  。 
 
