1:4:9
虹村 凌

君は間違いなく命の恩人であるし
あの頃の僕のモノリスであったし
制作面や生活面におけるスペックとして僕が望んでいる人だし
君の処女性や乙女性
それら全てのバランスにおいて
今までの女性で群を抜いて良い女だよ
だから好きだし
大事にしたいんだ
そして大事にされている自覚もある
脆弱なる僕に
昔から絶望や希望や勇気といったものを僕に与えてくれたのは
その殆どが君だったからね

***


仕事を終えて寒ざらしの夜道を歩きながら
ろくなクリスマスを過ごした事がないと僕が言うと
君はコンビニでケーキを買おうと言った
それなら今日は特別にたのしく過ごせばいいよって笑いながら
コンビニで買ったおでんとケーキを小さなテーブルの上に並べる
大きさの違う木のお椀を黄色い蛍光灯が照らし出す
あたたかい湯気のでるおでんを二人でわけて食べる
安い味がするケーキをプラスチックのスプーンでくずす
まるで絵本をひらいたような
そんなきれいで単純な幸せに
くすぐったくなって
目をそらして笑う

本当ならばいまごろ
泡だらけのバスタブの中でむかいあって
いろいろな話をしていたかも知れない
こんど生まれた時のことは約束できないし
死んだあとのことも約束できないから
いま生きているこの時間のなかで
いろいろな話を


自由詩 1:4:9 Copyright 虹村 凌 2010-12-25 02:30:05
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