本物の雪
藤鈴呼

バドミントンの羽根の形
ふわりと 浮き上がる 瞬間に
不思議さを 覚える

固い レースのようだ
そう 連想すれば
見たこともない 小さな妖精に
着せてあげたい ドレスを 
妄想する

実家の 硝子のテーブルには
羽根を 解いたような
白い テーブルクロスが
斜めがけ されて いたっけ

紙飛行機を 作った時の気分も
同時に 思い起こして みる
先っぽが とんがっていて
こちらから 飛び出すのかと
とんがりコーンに 指を入れて
指人形みたいだと 笑いながら
考えて みる

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100段もの石階段を 見上げたら
昇る前から 溜息が 出ちゃう

けれど 頂上からは 絶景が 臨めるからと
甘い言葉に 気持ちを 奮い立たせる

一つ 一つ 数えていては
羊が一匹と一緒で 萎えてしまうから

何となく 太陽が 近くなったな、なんて
根拠の無い自信でも 足元に括り付けて
とにかく 歩くのです

昇る、 だなんて 仰々しく 考えて しまっては
何だか 膝に 錘(おもり)でも 付いたみたいに
感情の波も 激しくなって しまうから

おせんべいを 割る時と 一緒でね
階段は 浅い方が きっと 良いんです
一段が 高ければ
それだけ 昇る回数は 少なくって 済みましょうが

一歩一歩の負担が 大きすぎては
歩を運ぶ気力も 薄れそうだもの

おせんべいの 両側を持ってね
一杯 欲しいからって 力を入れ過ぎると
ほんの ちょっとの欠片しか もらえないの

欲張らないで ただ 持っていた人の方が
たくさん ご褒美を もらえるんだから、ネ☆

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手編みのマフラーが 温かいのは どうしてでしょう
それはね 心がこもって いるからだよ

ミンクのコートが 暖かいのは どうしてでしょう
それはね 命の光で 包まれて いるからだよ

それじゃあ どちらも あたたかいのでしょう
フェイクファーでも 良いじゃあ ありませんか

でもね フェイクは 何だか 肌に合わない時もあって
荒れてしまったり するからね

でもね ミンクは 手元にないから 仕方ないね
あの人が 作ってくれた えりまき まきまき
くびに まきまき

あたたかく してね
もうすぐ 冬だからね
もう 冬だね
初雪が 降ったんだって
会えなかったけどね
もうすぐ 会えるネ

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順番は 忘れた
けれど
たった 三色だった

赤 青 緑
確か こんな感じ

順番に 光を当てると
影の色が 変わる

水色 桃色 黄色

全てを 一気に当てると
白く なるんだったね

順番は 忘れた
けれど
たった 三食だった

意識と 気力を 繋ぐ
大切な 時間

幸せを 実感して
溜息も 吐ける
大切な 時間を

咀嚼して
大切な 食べ物が
通過した 後の 舌を

小気味良く 使って
欲を 語って

咀嚼する 瞬間と
同じように 頬を 動かし
笑うんだ

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外に出ても
本物の雪を 見られない
スタジオ内では
沢山の 紙吹雪が 舞う

粉雪や 桜に 見立てるならば
小さな 正方形が 良いらしい

長い時間 空中を 浮遊させるならば
長方形が 有効らしい

キラキラの 金や 銀の 紙吹雪を
まるで 本物の 雪であるかのように
笑顔で歓迎する 観客達

場内のヴォルテージは 最高潮
唸るように 響く 重低音
ハウル程に シャウトする ヴォイス

壁のデジタル時計ダケが
冷めた音で 日付変更線を 告げる瞬間
目覚めた

ブルッと頭を左右に振れば
呼応するかのように 犬が啼く
お前も 怖い夢でも 見たのか?と
寝ぼけ眼で 話しかければ
擦り寄る身体が やたら 熱い

デジタル時計の代わりに
ここに 体温計が 有ったならば
余計な覚醒も 起こさずに
お前の 役にも 立てただろうに

古ぼけた 冷蔵庫の端っこに
油まみれのマグネットと一緒に
ぶら下がっているのは
デジタル温度計だったから
とりあえず 室温を 測る
その ついでに
上機嫌までの 角度を 計ろうか

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自由詩 本物の雪 Copyright 藤鈴呼 2010-12-22 15:54:01
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