ひきこもりたがり
相差 遠波

私は閉じていたいのです

醜い物には瞼を閉じて
聞くに堪えない罵声には両耳を塞いで
美しいものだけ
蝶よ花よと歌っていたい

私は閉じていたいのです

寒い空気からは布団で隔絶し
詰まる息は空気清浄機で漉し
創りあげた私だけの王室で
月よ星よと眺めていたい

私は閉じていたいのです

それなのにあなたは
両手を引き剥がし
瞼をこじあけ
襟首を引っ掴んで
私を寒いドアの前に立たせる

服を重ね
自分のマフラーを私の首に巻き
自分は半袖のままドアの方向を指し示す
わざと創った厳しい顔で
私には解らない言語で何かを伝えようとしながら

私を 本当の世界へと続く寒いドアの前に立たせる


自由詩 ひきこもりたがり Copyright 相差 遠波 2010-12-21 11:00:11
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