甘酒
アラガイs


険しくも山を越え遠く獣道を辿るひと。冬枯れたすすき野原に歩き疲れ、ぺちゃくちゃと噛みくだいた米の粕をぺっ、と吐き出しては、また道を行く 。

夢みれば夢を追いたくなります。
街をさまよい、街に暮らし、それは、新しく血が生まれ変わる糧
どろどろに吐き出した米粒の甘い残り粕は、唾液にみとられながら発酵し、やがて生きたお酒になるでしょう 。
(一度きりの薫り
身は酔うほどに酔えばいい)
きみは原野に佇み
ふるさとの道しるべに書かれた古い謳を詠む。
夢みれば夢は果てなく
立ち止まる川下の堰
月は柳の幻に揺れ、米の甘い唾液は堰に盆の粕が溜まります 。
わたしもひとり、死んだ米を噛みくだく 。
口のなかで呟きながら、そして湯船に浸かります。
どろどろの粕は飲み込まれたまま発酵はされず
塩味のないお粥が
何れ、臓のなかで虚しく溶けてゆく
血は酔うほどに
酔えばいい 。








自由詩 甘酒 Copyright アラガイs 2010-12-21 05:54:06
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