甘柿
しべ
灰色の風が
冷え込んだ甘い匂いに吸われてしまう
電車の窓ガラスも
街路樹を伝う宵闇も
一本の薄いストロークにのって
色落ちしてゆく
弓のぼやけた冠を
空におくり
人びとは門を閉ざし
テレビをつけ
湯を沸かし
車に赤い火をくべる
ずきずきと
輝く柿の色
星は皆無
月は滲むように笑い
暗がりに蠢いた
甘い色は鮮やか
自由詩
甘柿
Copyright
しべ
2010-12-19 17:17:20