訪問者
シホ.N


たとえばこんなふうに
過ぎていく時間
雨がしきりに降っている
うす暗い部屋の中で耳をすまし
雨の打つ豊かな重みを聞いている

それはそれでよかったのだ
時間はきわめて人工的な
観念なのだし
どうしようもない閉塞感さえ
豊かな重みの一部になり得る

たとえばこんなときに
訪れるもの
うす黒く乾いた影がノックする
訪問者は
優しく拒んだあとに
厳しく迎え入れよう

部屋の中では
観念を機械的に体現する時計が
遅れぎみに動き続けている
それにしても
いったい何から遅れてるっていうんだろ
形のない観念を形にするための

時計の針は
動き続ける
訪問者が去ったあとも
部屋の主が消えたあとでさえも


自由詩 訪問者 Copyright シホ.N 2010-12-18 21:51:26
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