訪問者
シホ.N
たとえばこんなふうに
過ぎていく時間
雨がしきりに降っている
うす暗い部屋の中で耳をすまし
雨の打つ豊かな重みを聞いている
それはそれでよかったのだ
時間はきわめて人工的な
観念なのだし
どうしようもない閉塞感さえ
豊かな重みの一部になり得る
たとえばこんなときに
訪れるもの
うす黒く乾いた影がノックする
訪問者は
優しく拒んだあとに
厳しく迎え入れよう
部屋の中では
観念を機械的に体現する時計が
遅れぎみに動き続けている
それにしても
いったい何から遅れてるっていうんだろ
形のない観念を形にするための
時計の針は
動き続ける
訪問者が去ったあとも
部屋の主が消えたあとでさえも