『旅の印象』
Giton
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旅立とう言葉の彼方へ
開け言葉の前への扉
目を瞑り 口を閉じよ
堆く積まれたぼくら
の時代の言葉 先祖たちの
言葉の渦を踏み越えて――
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言葉の煉瓦を積み上げた囲障
築かれては崩れ崩れては築かれ
日々新たに構築され行く
城塞言葉の塹壕逆茂木の列
縦横に廻らされた長城の上から
支配する言葉 軍馬の嘶き
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言葉が創造したこの世界の「原初…
言葉は神と共に在り」
燦々たる光に吹き込まれた生命
人は言葉を生きる 喧騒の海
言葉の忘却とともに喪われる世界
時間の大河は永劫なる孤独の海に注ぐ
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そこでわたくしはいま言葉の
煉瓦を積むことをやめ わたくしは
この世界に言葉を投げつけて言葉を
剥ぎ取ろうとする 窓を開けば
ルネ・マグリットの堅い岩壁が
風景を塞いで聳え立っている
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それは露わになった世界そのもの わたくしは
忘れた故郷をちょっとだけ思い出すかもしれない
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