1214 討入の日の夜に
yumekyo

日本人は
源氏物語を禽獣の所業とは言わない
日本人は
赤穂浪士をテロリストとは言わない

日本人にも思想というのは
一応 存在はするのだけども
思想が規範となることは
原則として ない
言い換えれば
日本人にはイデオロギーは存在しない

近代というのも
イデオロギーのひとつにしか過ぎない
勝手に地面に線を引いて
区切った中身の人間に鉄の規律を科して
痛みは科学の進歩と経済発展で中和していく
近代というイデオロギーは
モザイクのような欧州大陸において
戦争を勝ち抜いて身を守る為の行為規範であり
本来 戦争をしない国には必要はなかったが
日本人は戦争をする為に近代を渇望した
しかしそもそも 奉ずる神すらひとつではない国においては
欧米からの近代の直輸入は
余りにも 余りにも滑稽すぎて
最後には近代ではありえない集団自殺が
近代国家の名の下に行われた

日本人は
源氏物語を禽獣の所業とは言わない
日本人は
赤穂浪士をテロリストとは言わない
日本人にはイデオロギーがない
イデオロギーのみで築かれた米国の軍人達が
日本を占領するとすぐに忠臣蔵の放映を禁じたことを
どのぐらいの人が知っているだろう

健全な社会風俗を保つ
強弁されると真の日本人ならば
恐らく身震いがするだろう
箱舟に乗せられなかった者たちを
福祉という大きな箱に一切合財ぶち込んで
そ知らぬ顔で過ごす日々は
健全の意味とほぼ変わらないことだ

日本人は
源氏物語を禽獣の所業とは言わない
日本人は
赤穂浪士をテロリストとは言わない
日本人は 行為はイデオロギーからまったく自由である
この僥倖を不幸という者はまた
何かにすべてを委ねなければ立っていることの出来ない
か弱い精神の人間であろうし
対外強硬論によって国内をまとめようという
国家主義の持ち主でもあろう


自由詩 1214 討入の日の夜に Copyright yumekyo 2010-12-14 23:37:47
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