その日まで
寒雪



太陽が地平線と出会い
辺りは薔薇が搾り出した
真紅の情熱に包まれていく
火照ったブランコに
ぼくときみは座って
目的もなくただ前後に揺られて
軋む錆びた鎖の金切り声を聞く
浮かんでは消える言葉も
発してしまえば消えていく情景の
移ろい行く物悲しさに溶けていく


太陽が地平線と会話を交わすのを
二人で体温を感じる距離で
静かに見つめるのはこれで何度目だろうか
出会ってから今まで
その都度ぼくは太陽が消えていく時に
きみを抱えて宵闇を残して
立ち去っていくのではないかと
心の奥底でいつも汗を流していた
もちろん今までは
ぼくの心配をよそに次の日も
太陽は昇りきみはぼくの前に現れて
挨拶の言葉がかすむほどの笑顔を
ぼくに毎日与えてくれた


短かった出会いの時を済ませ
太陽は完全にいなくなって
辺りは瞬く星空の零れそうな輝きと
ぼんやりと照らす水銀灯の薄明かりだけになった
相変わらずそばでブランコに揺れるきみ
明日にはぼくのそばを離れて
遠く遠くに旅立ってしまうかもしれない
可能性の低い想像に思わず涙ぐむ
ぼくの気持ちを知ってか知らずか
きみは無邪気に笑顔を返す
旅立ちの日に後悔しないで
笑顔で送り出せるように
ぼくは何度も心の中で
きみの笑顔を逃がさないよう抱きしめる
それしかできないのだ


自由詩 その日まで Copyright 寒雪 2010-12-14 07:25:45
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