砂上のひと
恋月 ぴの

ゾウさんの鼻先あたり
あるべきものが無いというか
腰の高さでぐるっとフェンスに囲われていた

ご丁寧にも幼い好奇心を遮るシートまでかぶせてある

わざわざペットを囲いのなかへ入れて
おしっことかさせる飼い主いるらしいしねえ

誰もいなくなった夕暮れの公園
砂場には誰かの置き忘れたスコップとバケツが寂しげで

そんな光景って記憶のなかに残るだけとなってしまったのかな

幼い頃、私が砂場で作ったもの
それはお城だったり
秘密の王国へ通じるトンネルだったり
できたと思ったらイジメっ子な男の子に壊されてしまうのだけど

いつものように泣きベソかいてると
どっからかカレーの美味しそうな匂い漂ってくる

だるまさんがころんだ

おなかがぐうっとなっちゃって
おんなの子だって袖口で鼻水なんか拭っていたけど

いまどきの夜空は街路樹に飾られたLEDの眩しさに遮られ

いつから息苦しくなったのかな
もっとおおらかさあったような気がする

砂の上には楼閣さえ造り得なくなって
それでも訳知り顔じゃすまされないのは判ってはいても

私のせいじゃないけどさ

吹き抜けた木枯らしに首をすくめて帰りを急ぐ





自由詩 砂上のひと Copyright 恋月 ぴの 2010-12-13 20:09:57
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