靴
アマメ庵
ぼくはいつも作業服を着ている
田舎ではみんなそうだったし 何の不自由もない
社名の入った制服 オフの日でも安全靴
それがぼくの正装だ
そんなぼくの格好を 都会の君は嫌った
ある日 一緒に街を歩いていた日
君は 靴を買おうと言った
あれでもない
これでもない
すったもんだの挙句
二人で選んだ NIKEの黒いスニーカー
初めて履くスニーカー
履き具合はなかなか良くて
その日だけは 水溜りを気にしながら歩いたっけ
遠く離れてしまった君
靴を買ったあの日以来 一度も履かれることのないスニーカー
今日も たった一人 下駄箱に残して
ぼくは 仕事に行く