君と蒸し器について考察するこの年月は
うめぜき
七月○日
君は誰かに蒸されて出来上がったと気がつく
その蒸し器の大きさにちょっと恐れを感じる
おそらくそういう人が他にもいるんだろうと思う
七月▲○日
富永の笑っているのを見ていたら気持ちが悪くなる
奥歯に得体の知れない幼虫がいるのだ
そのことは富永と口づけた君はきっと前から知っていたのだろう
そう思うと君がわからなくなる
八月×日
君が黙っていてくれというので
君のくちづけが終わるまで
僕は黙っている
八月○×日
とあるミュージシャンの歌声が欺瞞で満ちている
そのことに気づいて君に電話した
すると君のお母さんが出て
君が栃木県で大きな樹木になってしまったと泣いていた
十一月×○日
ようやく整理が出来てきたので
君の詩を書いてみる
すると文字からうじが沸いて来る、気がして
僕は過呼吸になってしまった
三月●日
ようやく整理が出来てきたので
君の写真を焼いてみる
すると君がへしゃげて笑い出した
声が高らかで
僕は難聴になってしまった
六月○日
ようやく整理が出来てきたので
とあるミュージシャンの歌っている様子を観る
すると欺瞞だと思っていたことがすべて
○○○だったことに気がつく
六月○○日
とあるミュージシャンの曲ばかり聞く
とあるミュージシャンのインタビューばかり読む
とあるミュージシャンのブログばかり観る
とあるミュージシャンと息継ぎのタイミングばかり合わせる
六月○×日
富永がとあるミュージシャンについて語るので
その口元ばかりを眺めてみる
幼虫が成虫になっていた
君はそのことを知らないだろうと思った
六月▲×日
蒸し器を作る
七月○日
蒸し器で君を作る
蒸し器で君を作る
蒸し器で君を作る
蒸し器で作る
蒸し器で作る
つくるつくるつくるつくる
七月▲○日
とあるミュージシャンの曲を聴いて栃木に行く
君に富永の話をする
八月×日
君が黙っていてくれというので
君のくちづけが終わるまで
僕は黙っている