夏の公園
いてゆう

そこから
中央に
丸い石を並べた
ネックレスのような道があって
豊かな膨らみを二つに分けるような
多分の道
人々がその橋を渡る日もあった
お年寄りとか カップルとか
呼吸のために
水はゆっくりと回っていたけど
浮いているのはほとんど悪意のゴミだった
競り出した水草の上まで
子どもだけで行ったら 見取り算されるよ
たまに 変なものが浮いていた ほとんど ミシシッピーアカミミガメだけど
一度だけ 巨大スッポンに見えたけど しっかり見たけど
(しっかりあなたの顔を見たけど)
今となっては自信がない

鳥もいろいろいたが
その橋の下のポケットにはよくアオサギが来ていて
じっと 動かず
長い長い魚を狙っていた
彼女は長い長い魚が好きだから
長い長い魚がたくさん泳いでいた
だから 分からないところで
絶えず伝説みたいなものが漏れ続けていて
いつまでたっても どうすることもできない

昼休み
ベンチでは
タバコを吸う人たちが 祈りのポーズで
天に 紫の煙を送り続けていた

いつもの
おじさんは
いつもの場所で
コンビニ弁当を食べていた
いつも 独り言で
「年金生活で どうヒマをつぶしたらいいのか わからん」
と 呟いていたが
だれも相手にしなかった

そして まれに
青いビニールテープの上
彼女はミニスカートでやってきた
時々 図書館の椅子で本を読んでいるときもあった
長い長い物語を読んでいたのだろう
周りは 桜の木で囲まれ細いウエストライン
蝉がよく死んでいた
(蝉は死など恐れない)
両眼に紅い花を刺し
唇は日付変更線
トンネルを潜り抜け
頬には金星に近い光を流し続けていたけど
本心は分からない
(それとも 分かりきっているか)
水が欲しくて蛇口を捻ったとき
滴る
水平線みたいだった

円柱列が続く
帰り道の途中 うっかり
透明の針を落としたところ
雨など降らなかったから 窓をしっかり閉められて
地下は円盤みたいに回転していて
無数の 土の子が走り回っていた
ミミズたちは 裸になって 懸命に
闇を食べ続けていた
ちょっと 風が強く吹けば
見えそうだった
純白のやさしい風が吹けば・・・
並んで 三日月の船に乗って
静かな深い海を渡り
昼の世界まで行けたのに

暑い毎日
光と影が流れていった
僕は地面に張り付いた
駐車場の石のひとつだったけど
いつも
地面に
転がり
彼女のことを考えてたり
空を見たりして
一日を過ごした

一度だけ
彼女が
空の
裏と
表を
縫いながら飛んで行くのを見た
ような気がした


自由詩 夏の公園 Copyright いてゆう 2010-12-12 19:52:59
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