キセキ
高梁サトル


眼差しの消失点へと駆けていく
中身のない信仰を抱えた踊る胸
爪先に跳ね上がる泥も
大地に繋ぎとめられない楔
芥にも成れない
逆さまに回る壊れた時計の
文字盤に白と黒の鉱石を並べて
連続する内接円の
結合されたひとつの点が
射影へと帰結してゆく
或る日の正午に
海岸沿いに脱ぎ捨てられた靴が
照り付ける太陽を追いかけている
その先の緩やかな月光に焦がれて
朝と夜を繋ぐ軌跡の
確かな幻影だけを拾い集めた
一握りの流砂を硝子の瓶に詰めて
窓際に飾ろう
夢からさめても忘れないように


自由詩 キセキ Copyright 高梁サトル 2010-12-12 18:48:25
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