発熱
山岸美香

熱くなった頬に導かれて
引かれて 繋がって
吐く白い息の裏側で 背中を押すのは掌。
12月の寒い風が
人の渦から生まれた熱気や摩擦が
ただ単に、この熱くなった頬の原因であれば
もういっそこのまま溶けて
お店に並んだ衣服達に包まれて
私じゃなくなってしまい
暗い階段の地面と混ざって
音を立てずに
ああ消えたくない。

床と地面が恋しいですか。
這いつくばって生きる虫に、
憧れを持ち、尊敬しますか
奴らが人間より時々すきです、
子供は虫に対して
自分を投影するものではないですか

指先の温度がぬるい。
茶色の長いマフラーが良く似合う髪で
腕が捉まった。
着ていた暖かい布地で
頬をきっと赤くしたから
体ごと引かれて、影が伸びればいい。


自由詩 発熱 Copyright 山岸美香 2010-12-11 21:27:42
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