夜は絵画
真島正人
夜は美しい絵画だと言って
お金持ちが買い取ってしまった
そんなのはもう
100年以上前のことさ
柴山の駅で降りて
ホームから空を眺めると
雲が動いていた
夕陽に赤い帆は
見えないけれど
夕陽に
白い雲は見えるさ
白い雲は
白い色だけじゃない
赤い色を
含んでいる
切ない色だな
胸がきゅんとなった
夜がなくなったって
夜が
買えなくたって
男は女を愛するし
女は男を
愛する
愛することを
忘れていた20年間を
取り戻すために
いっぱいに膨らんでいる
伝書鳩が
伝言を失って飛んでいる
足の先についた紙きれには
白紙と書いてある
夜がなくなってからずっと
僕たちは
夜の代わりのものを
夜にしていたけど
それでも問題なんて
何一つなかった
次の電車が来て
夕暮れのプラットホームは
今よりももっと切なくなるだろうから
僕はとび乗るんだ
次の電車に