詩忘れ月の歌
小池房枝

連れて行ってもらえなくても走っていける
クークー、君がそうしたように

歌ってよシンガー今日の合言葉 午前零時の愚者の黄金


クリスマス風のうなりに血が叫ぶライダーベルト三位一体

ねこよねこ、パニックしよう年末の商店街に魂が降る


地球宛、小さなセイに贈る手紙エルグの星をいつか見つけて

星々に樹魔の降る夜ディラックの海ディエンヌの遠い歌声


よろでるり本当に美味か「自我系の暗黒めぐる銀河の魚」は

パトロール、冬の円盤、えみという少女が一人で星夜を待ってた



ラグーンと浅海の色を託された薔薇を見た夜読み返す拓次

法面と路面の隙間のスミレたち も少し待っててそれから咲きなね


クラムボンは一つの光学現象です嘘です正体募集中です

シグナルとシグナレスねぇ君たちはあの後ちゃんと結ばれたろうか


下り坂カーブも今日はブレーキをかけずに行けるそんな気がして

体当たりして降らせたい金色の銀杏並木の雨帰り道の


沼に落ちた星は隕鉄だったので静かにそっと錆びていくとこ

観覧車もう人は乗りに来ないので橄欖石を置いてあげよう



双子座の流星群は来週です四つの腕でぶんぶん投げます

十二月午後五時暗くなりたての空に高々と夏の三角


イタリアンパセリ復活うれしいな早く使える大きさになれ

ベランダのアボガド冬を黙々と耐えてる割りには元気そうだな 


君はナス?それともダリア?いずれ君の名ともどこかで出会うのだろう

枯れるまま枯らすはずだった朝顔がまだやる気でした爪ほどのピンク


朝の陽が髪も睫毛も通らずにまっすぐ顔にあたってあったか

同じ場所で毎朝十時に見るスズメ同じスズメと分かればいいのに
 


目玉焼き誰が食べるの陽が海にじゅじゅじゅと落ちてお皿に乗ります

空からは光る爪先降りてきて地面をそっと確かめてました


飼い主に冷や飯食わせる悪いヤツ 炊飯ジャーの保温切るなよ

あざやかにウグイス色のメジロたち山茶花ざわざわさざめかせてる
 

あれはねぇクリスマスでなく夜通しのおっちゃんたちの工事のぴかぴか

公園の薔薇の茂みで眠ってたダンボールの人 今日は寒かろ


背の高いメタセコイアがゆっくりと真っ直ぐ揺れてる三日月の夜風

薄雲が風にゆっくり動くので空そのものまで流されていった



眠りながら時々躓くことがある何処を歩いているのだろうか

バイオリンにドルフィンなんて誰がつけた?
ストラディバリウス海を渡った?


チューリップ今にもチュンと地中から言って来そうな緑のくちばし

今日のこの日差しにどこかで梅が咲く後のことなど何も恐れず


汲み上げる水車にも似て観覧車 人々さざめきながら乗り込む

考えてみれば乱暴な星である空から水がだばだばざぁざぁ


あるでばらカピバラんとは牡牛座の主星から来た宇宙人だよ

ことこととジャムに煮られる林檎たち
リンゴ語でぷちりぽちりとおしゃべり



三上章みかみあきら「は」と「が」についてが有名です。
「ば」と「か」ではない。間違えないで。

君たちが世界と思っているものは社会なだけだよ世界は広いよ


寒施行油揚げ添え小豆飯供えれば街のアライグマ来る

かぼちゃぽちゃん湯船にそっと浮かべれば柚子がふわりと波に乗ります


今生は未生の緑を身のうちに抱いたまま土に還るどんぐり

地球からごくゆっくりとヒトたちは退いていけたらいいのだけれども


交すものは音と光の合図のみ船と船そして灯台と船

ただ其処にあること霧笛を響かせて届かぬ光を投げ続けること


短歌 詩忘れ月の歌 Copyright 小池房枝 2010-12-10 19:24:16
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