眼福
相差 遠波

眼福眼福
駆け行く灰の雲のあとに青い空
濡れ葉に水滴
さえずる群雀のふくよかさ

眼福眼福
丘の上に立つ古い山桜
枯れ枝に積もる雪
佇む烏のただ黒き姿

眼福眼福
薄墨色の稜線より射す朝日
河原に溜まる朝霧
ご来光に合掌する婆の手の優しい皺

眼福眼福
夏に近い初夏の緑にふくらむ山
散り残りたる藤一房
茶の野うさぎの跳ねて逃げ行く様

眼福眼福
よきものを見せていただきました
もしこの目が見なくなろうとも
ここまで蓄えができましたなら
見えてるも同然
むしろ無くしてからこそが
この福禄のありがたさ

眼福眼福
それまでは
もっと漁りにまいりましょうか

眼福眼福
椀に盛られた貝の模様の細やかなること・・・


自由詩 眼福 Copyright 相差 遠波 2010-12-10 09:54:38
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