nonya


爪を切る

快い音が響くたびに
日常の縁から否応なく
寸断されていく記憶

苛立ちの16ビートのリズムを
机の上に刻み続けた爪
つまらない照れ隠しに
痒くもない頭を掻いた爪

爪を切る

ぼんやりと眺めているうちに
つい手繰り寄せたくなる
切り落とされた記憶

堅く握り締めた拳の中で
口惜しさをひねり潰した爪
立ち去ろうとする人の
コートの袖に食い込んだ爪

切っても
切っても
また伸びてくる
生きているという証は

煩わしくもあり
いとおしくもある



自由詩Copyright nonya 2010-12-09 22:38:22
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