セバスチャン
乾 加津也

ごめんなさいね セバスチャン
こんなわたしで
もう かくれんぼはおわり
でてきておくれ セバスチャン
α(亀裂の称号)を せめて抱かせて

セバスチャン
ほら きいて
サイレンはやんで
危険はないのよもう だいじょうぶ


裸足は心底つめたいでしょう
悲しみで涙がとまらないでしょう
(窮屈に)しめつけられているの
もだえているの
戸をたてないで
眼をとじないで
海のように
空のように
不安を口から吐いて広げて
大輪の花を思い浮かべて
α(亀裂の称号)の指で摘みとるのよ
ω(修復の記号)の腕にとびこんできて
一緒にあたたかくなれるのよ


     おまいの耳はロバの耳/おまいの耳はロバの耳/おまいの耳は
おねがいだよううずくまりたいよういいわ骨格をあげるわ


                        おまいはひろみだァ
                      おまいは見られていたァ
                     おまいはため息の銃声だァ
                    おまいは皮膜をたれ流したァ
                ω復の記号)が土偶を孕まされたのは
      おまいが断りもなしに工業地帯で首をくくっていたせいだァ
                         おまいは抵当だァ
                     おまいは足を踏み外したァ
               ω(修復の記号)はおまいの主人格だァ
            おまいは臓器移植で捨てられる黒い蒙古斑だァ
       ω(修復の記号)はおまいの去勢を定義する看板職人だァ
    (((お)))(((ま)))(((い)))(((だ)))ァ


     おまいの耳はロバの耳/おまいの耳はロバの耳/おまいの耳は
おねがいだよううずくまりたいよういいわ骨格をあげるわ


おちついてきいて セバスチャン
α(亀裂の称号)の名を呼ばせて (ここでまつわ)
わたしの(声を) セバスチャン
わたしの セバスチャン
いとしの セバスチャン


自由詩 セバスチャン Copyright 乾 加津也 2010-12-09 00:20:59
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