セバスチャン
乾 加津也
ごめんなさいね セバスチャン
こんなわたしで
もう かくれんぼはおわり
でてきておくれ セバスチャン
α(亀裂の称号)を せめて抱かせて
セバスチャン
ほら きいて
サイレンはやんで
危険はないのよもう だいじょうぶ
裸足は心底つめたいでしょう
悲しみで涙がとまらないでしょう
(窮屈に)しめつけられているの
もだえているの
戸をたてないで
眼をとじないで
海のように
空のように
不安を口から吐いて広げて
大輪の花を思い浮かべて
α(亀裂の称号)の指で摘みとるのよ
ω(修復の記号)の腕にとびこんできて
一緒にあたたかくなれるのよ
おまいの耳はロバの耳/おまいの耳はロバの耳/おまいの耳は
おねがいだよううずくまりたいよういいわ骨格をあげるわ
おまいはひろみだァ
おまいは見られていたァ
おまいはため息の銃声だァ
おまいは皮膜をたれ流したァ
ω復の記号)が土偶を孕まされたのは
おまいが断りもなしに工業地帯で首をくくっていたせいだァ
おまいは抵当だァ
おまいは足を踏み外したァ
ω(修復の記号)はおまいの主人格だァ
おまいは臓器移植で捨てられる黒い蒙古斑だァ
ω(修復の記号)はおまいの去勢を定義する看板職人だァ
(((お)))(((ま)))(((い)))(((だ)))ァ
おまいの耳はロバの耳/おまいの耳はロバの耳/おまいの耳は
おねがいだよううずくまりたいよういいわ骨格をあげるわ
おちついてきいて セバスチャン
α(亀裂の称号)の名を呼ばせて (ここでまつわ)
わたしの(声を) セバスチャン
わたしの セバスチャン
いとしの セバスチャン