I (アイ)
salco

単純な義侠心なら簡易に示せるのだ
幻滅を与えるだけのお人柄ならある
私の愉快が他者を不快がらせ
物の見方が余人の怒りを誘発するように
相手を傷つけるだけの好意ならあげられる
誰をも救えぬ善意なら持っている
それは結局
ネコが前肢で獲物を転がす程度の遊戯なのだ
自我とは歯牙であり、己が指先を護る爪だから

愛、って何さ
利害の衝突に自己犠牲を敷いて耐え忍ぶ美徳、か?
アホ抜かせ
チンカモ修辞が笑わせるぜ
てめーの楽土に固執するだけの話だろーがよ
こちとらナンやナニーになるつもりはない

安っぽい人生を乗せた道
外灯ひとつない
山肌を縫うふざけた高速
手前のヘッドライトだけが命脈だ
「二人暗夜行路だね」なんてウケ狙いも
あっという間に心の中で自嘲に溶ける
行く手行く手で霧が闇を舐めている
運転者の同乗者が言う
「霧って動物みたいだね」
動物の捕食するさまみたい
比喩の亡霊など
思い交わしたところで何になる
ただの自然現象だ
肝要なのは、注意一秒けが一生

お前の存在には何の必要性もないのだと
路面を叩くタイヤが同乗者に唄っていた
貴様は誰にとっても無意味なのだと
居眠り防止の凹凸が同乗者に聞かせていた


自由詩 I (アイ) Copyright salco 2010-12-08 00:45:49
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