マイブーム:味噌
ガマパックン

朝は朝食に味噌汁を飲む
味噌汁と一言に言ってもなかなか奥深いもので
すっかり味噌汁の虜になってしまった私は
関西の白味噌の上品さに飽き
信州味噌の素朴さに飽き
最終的に田舎、大分の田舎味噌に落ち着いた
その味は格別うまいというわけではないが
毎朝口に広がる甘辛さが不思議と気持ちを落ち着かせ
ついには大分から味噌をとりよせるまでになってしまった

職場までは駅をほんの5つ跨ぐだけでいい
有象無象の感情の中ほんの少しだけ重く感じる空気も軽くいなし
他愛もない会話を交わしながら終業時間を過ぎ
また電車にのり駅前の一軒の居酒屋に入る
千円札を二、三枚確認し
いつの間にか体中にこびりついている有象無象をアルコールに溶かして
胃へ流し込むと、腹からだんだんと温かみが手足まで広がる
確認した紙幣を店員に渡し、ありがとお、一言告げて家路を歩く

川沿いの土手を歩いている
川のあっちがわから、グラウンドを煌々と照らす白色光が
川面でゆらめいている
土手の斜面下で深く生い茂る雑草から顔をあげると
橋下の白色光も月の光も届かない暗がりの
隅にうずくまったようなダンボールの覆いの隙間から
オレンジ色の光が漏れている
そこからうっすらと食欲をそそる匂いがしてきたような気がして
インスタントか、またはなんの味噌の匂いだったかとぼんやりと考えながら川面を眺めていた

気がつくと、いつのまにか川の向かいのグラウンドのライトは消え
どこまでが土手かも判別のつかない暗がりの中で
オレンジ色の明かりが心もとなげにゆれるばかりになっていた
ただかすかな味噌の匂いだけが
そっと私の背中を押している


自由詩 マイブーム:味噌 Copyright ガマパックン 2010-12-05 12:41:33
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