なにぬねの
小川 葉

 
 
(な)

なにもない
なもない
なのはなさいていた

ほかのなにかに
なりたくて
なりたくても
なれなくて

ならなくて
よかったと
なまえもないのに
さいていた

ははの
なのように


(に)

にている
あなたはとても
にいさんに

にんげんの
にいさんに
あなたはにている

いえを
たててくれた
にいさんを
ときどき
おどろかせている

ありがとうを
いいたいだけなのに
すませてくれて
ありがとうと

むかし
にんげんだった
にいさんが


(ぬ)

ぬっとあらわれて
ぬすんでいく
わたしたちの
ぬ、を

ぬ、をうしなった
わたしたちは
ぬかづけのあじも
いみもわすれてしまった

ぬ、ばかり
ぬすんで
なにをたくらんでるんだろう
ぬすびとは

ぬくもりが
ほしかったのです

くもりガラスの
むこうから
いまもそんなこえが
きこえる


(ね)

あまりにも
よくねむるものだから
ねことなづけられた

けれどもそれは
ひとがかってに
つけたなまえだから

ひとがいないところでは
あんがい
くろうしてるのかもしれない


(の)

のりものに
のってみたい

たとえば
ひとのからだに

そんな
かわいそうな
たましいを
のせてきょうも
いきている

しゃそうから
なつかしい
けしきを
みせながら
 
 


自由詩 なにぬねの Copyright 小川 葉 2010-12-05 02:35:34
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