ばあちゃんを乗せて
オイタル
ばあちゃんを乗せて
じいちゃんを見舞いに行く
ゆく道の傍らに
塀越しの柿の実が鈴生りだ
ひとつぶずつに
千年と千日の
日差しがはね返る
小太りの猫が座ってたじゃないか
毛の禿げた 灰かぶりのさ
日よけの長い簀の陰に
まあるくねえ
背筋を伸ばして ねえ
りんと顔を
あげちゃって
いいおとこ
なんて言っちゃって
猫の視線の先に
横倒しの自転車の子供が
細長い影の溜まりを作っていた
影に薄い影を重ねて
もうひとつさらに重ねて
それから
起き上がってきた
昨日の向きに進んでいようが
明日の向きに曲がっていようが
ちょっと
ほら ちょっとえさだってやって
だろ
いっつも みああなんて いって
ごろごろくっついて
それで きれいに
消えてったじゃないか
雨のころにさ
いったじゃないか じいちゃんは
もういやなんだ
そういったじゃない
いいじゃない
もう帰してあげて
ゆく道の傍らの
風避けの林の陰に
柿の実が
鈴生りにゆれている
たくさん
ゆれている
色とりどりの記憶を
枝枝に並べている
あっという間に吹き飛ぶ
あっという間の砂の記憶を
とても たくさん