蒼い唇 ☆
atsuchan69

息も乱れ、瓦礫の町を彷徨えば
徒(あど)なく見あげる空は燃えさかり、
逃奔する馬、羊、火を吹くF‐35ライトニング?
目視の肩撃ち式スティンガーに撃墜された、
――あれは有翼の機械獣。
 やがて地獄の淵から立ちのぼる
火炎で焼かれた屍の、ひどく邪まな匂い

 戦闘にあけくれる野郎どもの罵声と、
 乾いた瀝青の道が戦火の彼方までつづく

元気よく隊からはみだした
堅牢かつ残忍な兵士であるこの俺の
逞しいブリキの心が荒馬の干肉を食らい、
小羊のあばら肉を食らい、敵のはらわたを食らう

 見ろよ、憎しみの大地が沈んでゆく
底なしの奈落に旧く狡猾な年月がくずれ落ちる
傾いた高層ビル群とゴミ捨て場の変死体、
点滅するシグナルや斑に錆びた記号の標識‥‥

そうだ、淡紅色に顔を染めた東雲の子たち、
夜の終りが来たら虚空にかよわく口ずさみなさい
いつか無情の瞳に涙が零れたなら
朔風に蒼い唇を窄ませて
けして畏れず、こう呟くのだ――

 罪なる緋色の薔薇が、
 傲慢な咎の街に咲いたから、
 生き血を吸った、鋼鉄の鋭い棘と棘が、
 儚い命を、暁に散らせた、と。

白く小さな花を咲かせたヒースの枝に
吊るされた血痕と精液が付着したパンティー
昼も夜も奉仕を強いられる少年少女の喘ぎ、
幼児性愛の政府高官だの糞尿趣味の麻薬長者だの
ビデオ撮影のために両手両足を切断された娘の絶叫、

 およそ人間でない人間どもの残虐な日々よ
 ――すべて燃えろ!




自由詩 蒼い唇 ☆ Copyright atsuchan69 2010-12-04 15:17:59
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