season's greeting
月乃助

十二月の今宵、それは生まれる
光りを放つ発光体さながら
何かの対価としてではなく
忘れていたすべてを思い出させる核のようなものとして


すでに街は、待ちわびる螺旋の中心を軸に動き始め
ゆっくりとした鼓動を響かせながら
きらめく明かりを ちりばめる
平穏な永い眠りのその先に、今まで見据えてきたものを探し当てた
その終末点へと 留まる事を夢みて
連続する日常の偽りから
この夜と日は解放され、


慈しみに手を差し出す誰もが、我を忘れたように 足早に過ぎていく
やってきた季節の 隠された光りの奔流に身をまかせ
自ら輝きの一つとなるのを躊躇わない
厩に生まれた赤子の古からの 産声は
消え去ることがなく 抗いようもない寂しさをまとっていたとしても


安らかな子供達の寝顔に
一年の長さの重さをはかることを知り
きっとみている、飾り付けたクリスマス・ツリーの下で待つ
色とりどりの箱の夢をこわさないように
部屋のちいさな明かりの影を消す


星が降るほどの
きらめきを増した街の喧騒に
ひと時 おこぼれを期待する野良猫たちの鳴き声が、
冬のつらさを忘れたように
うす汚れた なごり雪の合い間
行き場を失うように響いて消えた


至福と孤独の背反率
愛するものを持つ 人々の季節なら
それを手にしない者には、残酷な
悲しみをもたらしては、人を突き放し
見捨ててしまう祝い
歓びの渦 苦しむものたちはそれを避けようと
足を踏み入れることもなく 心を閉ざす


私は、指に触れたそんな寂しさに
少し眉を寄せた顔で、それでも心をきめて
ただこの時を 刹那に想いながら


Merry Christmas,
Happy Christmas,
Wishing to all


訪れる新しい年が、あなたにとって
幸せな年でありますように







自由詩 season's greeting Copyright 月乃助 2010-12-02 18:03:53
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