天才的ピアニストの、独白
番田
今日もとても疲れた体で
私は たき火に 当たっている
たき火に 体は 当てられていた
たき火は ぼうぼうと燃え
言葉の一つすら なくしてしまいそうだった
シンガポールの 真っ暗な バーだった
ホテルにまた 君と 舞い戻るのだろうと
モスコミュールを 注文する
手は ひどく かじかんでいた
私の 音楽的才能の 無さへと
今日は 本当に 疲れ切っている
*
今日は 本当に 疲れ切っている
バニラアイスでも舐めて
一人 流れる時間でも見つめていたかった
やるきすらも無くしてしまったんだ
追い続けられるだけの人生なんて もういやだ
もの悲しさだけが漂う 今日の洗濯機の回転音
怒りすらも心からは消滅したよ
*
キャバクラ嬢とはいっても 愛想はすでに尽きてしまっている
おっぱいを見つめる けれど ここは前金だから 掴めない
いつかどこかで食べたことのある気がする
手にした 黄色い バナナクレープの 苦い味
苦い鼻水を揺らし続ける
エスキモー出身のマスターとは仲直り
昨日までのあんたはどこいったと
死んだ蛙を跳ね回らせる