天才的ピアニストの、独白
番田 


今日もとても疲れた体で
私は たき火に 当たっている
たき火に 体は 当てられていた
たき火は ぼうぼうと燃え
言葉の一つすら なくしてしまいそうだった
シンガポールの 真っ暗な バーだった


ホテルにまた 君と 舞い戻るのだろうと
モスコミュールを 注文する
手は ひどく かじかんでいた
私の 音楽的才能の 無さへと
今日は 本当に 疲れ切っている



今日は 本当に 疲れ切っている
バニラアイスでも舐めて
一人 流れる時間でも見つめていたかった


やるきすらも無くしてしまったんだ
追い続けられるだけの人生なんて もういやだ


もの悲しさだけが漂う 今日の洗濯機の回転音
怒りすらも心からは消滅したよ



キャバクラ嬢とはいっても 愛想はすでに尽きてしまっている
おっぱいを見つめる けれど ここは前金だから 掴めない
いつかどこかで食べたことのある気がする
手にした 黄色い バナナクレープの 苦い味


苦い鼻水を揺らし続ける
エスキモー出身のマスターとは仲直り


昨日までのあんたはどこいったと
死んだ蛙を跳ね回らせる



自由詩 天才的ピアニストの、独白 Copyright 番田  2010-12-02 02:52:55
notebook Home 戻る