静物画家の日記
番田 


逆光の色など美しいわけがないと、
絵画を見つめながら私は呟く。
私の絵画が目の前には実体として確実にあるのだが、
夕暮れの、緑色の丘における、
涙色をしたため息を吐かされている。


水色の船の出る海を目尻に眺めては、
真っ白い浜辺に人々のたむろしている、
今日の日は光り輝く良い天気だ。
散水シャワーの裏手にある静かな店で、
高すぎるコーヒーをすすりながら子供の水着を眺めている。


ベッケンバウアーの放つジャンピングボレーシュート。
所持金を無くしてサンドイッチに噛みつけば、
親父は小馬鹿にしたような目つきで俺を刺してきた。


オリーブオイルをしぶしぶとパンに吹きかけ、
色んなものを涙の流れる胃の壁に向けてなすりつけた。
わざわざ遠出の旅行に出たところなのにこの有様。



この店一番のご令嬢の金色の髪の毛が入り口の扉からおでましだ。
キャバクラ嬢の手のひらに触れるのはかまわないとのことで、
気にくわない傲慢な相手には偽のクレームをする娘もいる、
ボディタッチなどは即退場とのルールを説明された。


ツマミのスルメを奥歯の先端を使って噛み砕いた、
何気なく手を触れながら酒を回し飲みしあっている俺。
ガーターストッキングは新調したものだと言っていたが、
見ることはできないという説明に今夜も頭に来ることばかり。


どこまでも続く赤土色した壁だらけ。
鼻の穴からはみ出たメチルアルコールが燃え広がる、
レミオロメンのへたくそなバックコーラス、
ミニ四駆のゴムタイヤを装着すべきだ。



自由詩 静物画家の日記 Copyright 番田  2010-12-02 02:52:07
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