instinct —花蘇芳—
涼深

――しゅるり。

白いシャツが微かに鳴いて

仄かに上気した首筋
淡い名残の花

貴方は未だ気づかぬ儚い枷


――とくり。

夜気に熱を奪われて

冷えたシャツ越しに
ゆるやかに波打つ鼓動

貴方が息づく不確かな証



戯れに口づけ
徒(いたずら)に指を這わせ
偽りに繋がる

不誠実な温もり
高揚する細胞

モノクロの部屋に射しこんだ光
歪む像を映すのは
見知らぬ誰かの契り

形ある枷など
貴方に不似合いだから

銀の約束に
唇を寄せた



――とろり。

また一つ、
境界線が消えていく


確かなものは何もない

善悪さえも
情愛さえも

裏切る貴方が愛おしい



花蘇芳(ハナズオウ)
花言葉 : 「高貴」「質素」「不信仰」「裏切り」「疑惑」「豊かな生涯」「目覚め」





自由詩 instinct —花蘇芳— Copyright 涼深 2010-11-29 20:46:00
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