別離の風景
寒雪
木枯らしがわがままに通り過ぎる新月の夜
きみとぼくは人気の疎らな
寂れた駅のプラットフォームで出会う
互いにはにかみながら
それでも幼少期からそばにいる
竹馬の友を真似た笑顔で
触れられそうなぎりぎりの距離感を保ち
足並みを揃えて
停車しているくすんだ灰色の電車に乗り込む
向かい合わせに座り
列車の振動に無様に揺られながら
二人は取りとめもない
話したすぐにもう思い出せない会話に
喜怒哀楽を交えながら盛り上がる
握った手の平のしわが
気が付くと三倍に増えている
トンネルの暗闇
開けた入江の汚さ
枯れ果てた雑草が眠りに付く草原
二人の目に飛び込んでは脳裏に消える
抑揚のきいた二人の弾力のある声が
次第に低く落ち着いていく
見てごらん
きみに促されて外に振り向くと
そこにはいつの間にかプラネタリウムの
賑々しく輝く偽りの星たちが
星座を作っては忙しく立ち去っていく
悲しげな自分たちと交錯する光景に
顔を背けるとそこには
涙のない諦めにも似た泣き顔のきみ
やがて
静かに前進を止め
見知らぬ駅にたどり着く電車
片手を上げぼくに背を向けるきみを
追いかけようとして躓いて転んだ
見上げたきみは一瞬微笑んで
そのままドアの向こうに存在を消す
降りることを許されず
残されたぼくは一人
眼前の座席が再び人肌に暖まることを
心の奥底で期待しながら
座席から零れる窓の景色を追い続ける