バタフライジェシカ
からふ

やらしくない裸みたいな
蝶々が翅を広げて
紫色の光を頭の中で回させる
つややかな官能



ジェシカ、
君がセックスをせっくすと発音するから
僕はいつまでも取り残されている
いつまでも大きくなれない僕は
調味料ときれいごとが並べられたキッチンで
小洒落た料理を作っている
君はそれを食べずに
僕に気づかれないようにシンクに流し込んでいく



笑ったときのくちびるが昇っていく三日月みたいって言ったら
少しだけおびえた顔をしてまた笑った
言い訳を見つけられなかった君は
ぱたりと笑うのをやめて
沈んでいく三日月みたいなくちびるをして靴を履いた



君はバス停のベンチに座りながら
スカートの裾の悪意を手に取って眺め
それと不釣り合いに涙を流す
降らない雨にビニール傘を差して
バスも待たずに君は飛び立った




自由詩 バタフライジェシカ Copyright からふ 2004-10-26 17:23:08
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