糾える光の蔓
within

押入れに隠れていた
暗い密室の中で
埃っぽい空気の中で
春の芽吹きを待っていた

喉の渇きに苦しみ
時折、浸みてくる温もりに身体を寄せ
ずっと夢を見ているような
おぼろげな意識で
昼と夜との繰り返しに身を任せた

言葉でもあり
言葉でもない声が
弾けて消えて過ぎ去っていく

血の気のない白い手足に
触れてくれているのは誰だろう?
それともこれは幻か?
はっきりとしない意識で
感じるものに半ば怯えながら
目を瞑り、息を潜めた

見つからないように
でもいつか
許してくれることを願いながら
隠れていた

でも
私だって飛び立ちたい
世間に拒否されても
世界を縦横無尽に
不恰好な翼でも
旅立ちたい

なら飛べばいい

死から産まれた旅人よ
そんなに生きたいか?
喜びを知りえたか?
蜻蛉よりも儚く死んだ稚児と
百年生きた老婆の違いは何だ?

内なる喃語に耳を傾けよう

一つの記号が
一つの音を示す
音符は
生命の秘密の一つの器

歌おう、自分の歌を作ろう
懐かしい記憶を幼子に贈ろう

冬が来る前に
冬の終わりに

私は形を変えていた
何だ?この高揚は?

光、そう、これが光
私に命を与えたもの

さあ行くよ
声が聞こえてくる方に向かって
双葉を開く
私は生きている
生きているよ


自由詩 糾える光の蔓 Copyright within 2010-11-28 17:36:44
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