あいうえお(「五十一のデッサン」インスパイア系)
小川 葉
(あ)
あかんぼうが
ないている
あー
あー
それはぐうぜんにも
ひらがなの
さいしょのおとだった
こもりうたをきかせると
いー
いー
と、わらった
(い)
いのちが
やさしく
つつまれている
い
という
もじに
すこしはなれた
せんとせんの
ひとつはとうさん
ひとつはかあさん
そのまんなかにある
くうはくに
わたしのいのちがある
きみの
いのちも
(う)
うまれたばかりの
う、のように
う、はまだ
ことばをしらない
ぼくもまた
う、をしらなかった
み、に
たどりつくまでは
(え)
えのしまは
きっと
え
のかたちのしまだ
すこしはなれた
ちいさな
うえのしまにつくまで
したのしまで
くねくねと
なんどもまよった
かきじゅんは
うえのしまから
ともしらずに
(お)
おかえりなさい
といわれると
そこが
うまれたいえのような
きがしてくる
おいしいかい
ときかれると
それが
かぞくのような
きがしてくる
おいとまの
じゅんびして
なごりおしく
おうちをでると
おーい
わすれもの
オットセイが
ないている