あいうえお(「五十一のデッサン」インスパイア系)
小川 葉

 
 
(あ)

あかんぼうが
ないている

あー
あー

それはぐうぜんにも
ひらがなの
さいしょのおとだった

こもりうたをきかせると

いー
いー

と、わらった


(い)

いのちが
やさしく
つつまれている


という
もじに

すこしはなれた
せんとせんの

ひとつはとうさん
ひとつはかあさん

そのまんなかにある
くうはくに
わたしのいのちがある

きみの
いのちも


(う)

うまれたばかりの
う、のように

う、はまだ
ことばをしらない

ぼくもまた
う、をしらなかった

み、に
たどりつくまでは


(え)

えのしまは
きっと

のかたちのしまだ

すこしはなれた
ちいさな
うえのしまにつくまで

したのしまで
くねくねと
なんどもまよった

かきじゅんは
うえのしまから
ともしらずに


(お)

おかえりなさい
といわれると
そこが
うまれたいえのような
きがしてくる

おいしいかい
ときかれると
それが
かぞくのような
きがしてくる

おいとまの
じゅんびして
なごりおしく
おうちをでると

おーい
わすれもの

オットセイが
ないている
 
 


自由詩 あいうえお(「五十一のデッサン」インスパイア系) Copyright 小川 葉 2010-11-28 04:08:31
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