あの路地で
鵜飼千代子

あなたが待っていると
思っていた
あの路地の入り口で

殺そうとする全てを欺いて
あなたに会いに行くには
どうしたらいいのかと
             
線路を渡った
       
車道を横切った

とっても悲しい一日だった
とっても悲しい一日だった

来てはいけないとあなたが言った
完成すれば壊れるものなのだと
淋しく笑っていた

心が握りこぶしをぎゅっと締め
声にならない泣き声をたてて

愛してる
愛してる
             
爪が手の平に食い込むほどに
強く強く握り締め
身体を丸めてじっとうずくまる

とっても悲しい一日だった

白い壁の
窓の大きなあの家で
いつかみんなで一緒に暮らせれば

そんなことを
夢みてた

わたしは何も言わなかった

あなたのことを
何も

言わなかった



           1999.07.17.  YIB01036. Tamami Moegi.  
           初出  NIFTY SERVE FPOEM 


自由詩 あの路地で Copyright 鵜飼千代子 2010-11-27 20:10:22
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