口実
たもつ

 
 
計算ドリルをしていると
首筋に夜明けがやってくる
近くに声の病院があるので
あたり一面、ささやきや独り言が
しん、としている
隣の人が自転車に乗って
仕事場へと向かう様子が見える
仕事場に必要なものは
人なのか自転車なのか
よくわからないことが
ありふれている
計算ドリルはページの隅にまで
問題が敷き詰められている
答を書く余白がないので
いつまでもドリルは終わらない
あなたに伝えたいことは
たくさんあるはずなのに
握り締めたままの鉛筆の香りが
口実のように掌に染みついてる
 
 


自由詩 口実 Copyright たもつ 2010-11-27 11:51:59
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