朝は見知らぬ人のきみ
高梁サトル


鬱蒼と茂る羊歯の中で
たどたどしいしろい両手で模型を組み立てる
傍でこちらに気付くのを静かに待っている
挨拶する為に
毎朝のこと、

一度しかない日々で
知るほどに血生臭さくなってゆくことを学び
劣等感を拭う為に無我夢中で走っては
上等な燃料を食いつぶして立ち止まり
梢の先に淘汰されてゆく色彩を眺めている
目の前にあっても遥か遠くに見える
何を言っても届かないだろうと思うほどの
距離を持ちながら

死肉を口に運び
消化する臭いを撒き散らしながら
きれいに仕立てた服を着て大量の名刺を切る
週末には温石の代わりにペットを抱いて
そして時々
イミテーションのような何かに癒されたくなる
差を付けることばかりに気が狂ってる
人間でいるのに疲れて表情のないものになる
信心深い顔をして増殖し続ける
楽しみを見出した恍惚の表情たち
いのちが尊いとはっきり自覚している生物が
手折ろうと踏み潰そうと気にも留めない
何かに

茜色の空が閉じていくのを眺めながら
肩に降り積もる暗闇に見失わないよう
しっかりとお互いを抱いて
少しだけ話をした
感情自体が何かを成し遂げることはないということ
さみしいねときみが笑って
僕は俯いて泣いたんだ
あまり大げさにならないように

羊歯がすっぽりと輪郭を覆って
器用に模型を崩すくろい両手が同化してゆく
傍で過行くものと留まるものを見守りながら
瞼を閉じる
毎晩のこと、


自由詩 朝は見知らぬ人のきみ Copyright 高梁サトル 2010-11-25 00:33:57
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