灰色ウサギの残像
西日 茜
風はとうから吹いていて
それはまるで空回りする蔦のように
くるくるとからみつき
見えないままで終わるよう
まぎれもない事実のように去って行った
振り向くことはしなかった
夜中にのどが渇いたので
キッチンへ行き冷蔵庫の牛乳パックを口飲みして
横を見たときに窓の外を走り去るウサギが見えた
後を追いかけていくと
薄暗いゴルフ場のバンカーの淵に立って
こちらを見ていたが
良く見ると二本足で灰色で
緑色の光る眼をしていた
薄気味悪かった
やらなければいけないことを思い出した
君に言うべきことを
伝えておかなければならないことを
警告していたのだ
あの日上空に旋回していたプロペラ機は
方向を失い壊れた破片が屋根を突き破って
寝ていたわたしを直撃したことを
ずっと後になって知ったが
そう悲しくはなかった