足跡
寒雪



同じ動きをトレースしながら
白い泡を口から噴き出し
穏やかに波は通り過ぎる
海風に撫でられていつでも
湿気のコートをまとった
重い砂の上を二人は歩く
景色を見ているわけでもなく
目的地を目指しているわけでもなく
足跡はただ
二人の後をただ無口に追いかける


太陽の天然な明るさを
肌で触れることが出来なくて
どれくらい時計の針が回ったのか
意地悪く足を掬おうとする砂の
足元に伸びる手を蹴散らして
空を見上げる二人
キャンバス一杯に描かれた黒い雲は
見ている二人の心を巣食う
隙間にねじ込まれた闇の風景


ふと目線を下げると
いつの間にか
一つだった足跡は双子になった
少しずつ離れていく距離
手を伸ばしても
背姿を抱きしめることが
最早難しくなった
縮まらず広がるだけの足跡たちを
波はやはり白い泡を噴いて
二人の耳を塞ごうと潮騒を奏でる


自由詩 足跡 Copyright 寒雪 2010-11-23 09:28:09
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