生きる
木屋 亞万
生きなければならない
しかしそれは義務ではない
1が限りなく並ぶ世界で
0に限りなく近い私は
生きていなければならない
それは誰のためでもない
生きていくことに意味があるとしたら
その意味が失われていたら生きてはいけないということだ
意味がなくても生きていけている今があるから
わざわざ意味を求めてさ迷い歩く必要はない
意味に意味がないということの意味ですら
別にしっかりと握り締めていなくていい
守るべきものが目に見えないのなら
目に見えるものにしがみつく必要はない
いつ手放しても構わないのだ
触ることが出来るものはいつか
明らかに失われたものとして
私を喪失で満たす
未来のことを考えすぎない方がいい
過去のことに囚われすぎない方がいい
どうせ今を足場にしていくしかないのだ
私が私でしかいられないように
今はいつまでも今で
遠い将来は毒でしかない
それが不安であっても
おぼろげな希望であったとしても
時が進むにつれてことが良い方向に進んでいく
という幻想は捨てた方がいい
昔の方が今よりずっと良かった
という陶酔からも醒めた方がいい
今は甘くも辛くもない
息苦しいものではあるけれど
それはまたたまらなく快でもあるのだ
この世に死というものはない
ただ生きているものたちが生きているだけの世界だ
私たちが死と思っているものは
単なる生きることの終りでしかない
生きることこそ、すべて
終りを飾りすぎてはいけない
急いで終わらせても何もいい事はない
今、この今に
今こそ立ち止まって
今を感じる、見つめる、考える
そして、今の真っ只中にただ存在するということ
それだけだと気づく
過ぎ行くもの
壊れ行くもの
消え行くもの
それらが美しく見え
とても良いものに思えるのは
今あなたが生きているからだ
私が生きているからなのだ
生きていなければ何もない
だが生きることは義務ではない
そこに意味などない
ただどうしようもなく生きている
それだけなのだ