きせつにサヨウナラをして
石川敬大



 あんなにも忙しくぼくの脚はうごいていたのに
 それいじょうに
 踏みしめていたものの方が素早いなんて
 なので、いつまで此処にいられるか
 ぼくはじっさい
 心もとない気分です


  きせつは急速にふゆをむかえ
  新しい年のしろい額がちらつきはじめた


 こんなにもいそぐ
 地球を
 まわしているのはぼくではありません
 もちろんきみでもないのですから
 ぼくたちは
 ぼくたちの地球は
 だれかの手によってまわされているのです、きっと

     *

 とうげはあっ気なく越えた気がします
 のりものはすでに停車場をはなれたみたいです
 こんなにも
 しーんとしずかですから

 声がいつもそばにあって
 ぼくを支えてくれていたのですが
 このごろは
 ざつおんが多くて
 ぼくの耳はききとりづらくなりました


  きせつはかわいた疎林になり
  一葉は石になってときを打刻する


 だからぼくたちは
 ふりおとされないようにしがみつくのです
 きょうもなんにんもふりおとされて
 くらい宇宙空間に
 ほうりだされてゆきました

 あしたは
 きみのぼく
 ぼくのきみとして
 で、あるのかもしれません






自由詩 きせつにサヨウナラをして Copyright 石川敬大 2010-11-23 00:44:08
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