きせつにサヨウナラをして
石川敬大
 あんなにも忙しくぼくの脚はうごいていたのに
 それいじょうに
 踏みしめていたものの方が素早いなんて
 なので、いつまで此処にいられるか
 ぼくはじっさい
 心もとない気分です
  きせつは急速にふゆをむかえ
  新しい年のしろい額がちらつきはじめた
 こんなにもいそぐ
 地球を
 まわしているのはぼくではありません
 もちろんきみでもないのですから
 ぼくたちは
 ぼくたちの地球は
 だれかの手によってまわされているのです、きっと
     *
 とうげはあっ気なく越えた気がします
 のりものはすでに停車場をはなれたみたいです
 こんなにも
 しーんとしずかですから
 声がいつもそばにあって
 ぼくを支えてくれていたのですが
 このごろは
 ざつおんが多くて
 ぼくの耳はききとりづらくなりました
  きせつはかわいた疎林になり
  一葉は石になってときを打刻する
 だからぼくたちは
 ふりおとされないようにしがみつくのです
 きょうもなんにんもふりおとされて
 くらい宇宙空間に
 ほうりだされてゆきました
 あしたは
 きみのぼく
 ぼくのきみとして
 で、あるのかもしれません
 
