愛するひと
恋月 ぴの
何かしら対価を見出したので愛するんだと思う
男のひとなら性欲の捌け口だとか
下心で膨らんだ股間を隠し
君だけを愛しているなんて恥ずかしくないのかな
女のひとだとしたら
無性に巣篭もりしたくなって
あれこれとかいがいしく身の回りの世話を焼いてしまう
ただひたすらと満たされたいんだよね
純な恋心を紡ぎだす度に
子宮の内壁から皮一枚ぷるるんとめくれあがって
新しい女に生まれ変わってみたり
背を向けて寝入る男の襟足に覚える
焦げ臭い体臭と
果たしてこの男に許してよかったのかという密やかな戸惑い
誰だって他のひとから愛されたいし
ちょっとだけでも他のひとを愛してみたい
僕を愛しているのなら口づけて欲しいと
目の前に突き出された欲望のかたちを指先ではじき
したたかに
曖昧なままでは決して許されぬ
そんな強欲とも言えそうな思いの向こう側で
いそいそと研いだ刃先を確かめる