家族の時間
ベンジャミン
家族といっても母とふたり
小さな箱のような部屋を
小さく切り取ったテーブルに
向かい合うことは少ない
たとえば小さい頃は鍵っ子で
学校から帰っても一人
母は生きるために働くことに懸命だった
そんな姿を見て育った私もまた
知らないうちに何かに懸命だった
それを誰が責めるわけでもなく
知らないうちに何かに蝕まれていても
自分が無理を重ねていることに
気づくことは難しい
たった数年で
まるめた紙屑のようになった私を
目の前にして母は泣く
自分を責めるようにすすり泣く
でも母さん見てください
私はこんなに生きています
まるでそんなことを忘れていた頃よりも
私はたしかに生きてるという実感の中で
そんな会話を何度かして
一度止まった砂時計の砂が
再び静かに流れ始める
小さな家族の
小さな時の流れが
たしかに家族の時間であることを
今
静かに証明ながら