冬の高台にて
塔野夏子
見わたす夕空は
菫青石
(
アイオライト
)
藍晶石
(
カイアナイト
)
天青石
(
セレスタイト
)
のモザイクです
君の微笑みに
さびしい火がともります
ああそのせいか
君の黒い外套 黒い手套
すぐ傍に居るのに
不思議に遠い
影
(
シルエット
)
のように映ります
けれどどうか
今はその火を絶やさずに居て下さい
それを見て居ると何だか
二人逃避行のさなかのような
そんな気持ちになりもするのです
風は無くただ冷たい空気が
しんしんと降りつづきますけれど
少しずつ昏さを深めてゆく空の下
今しばらくは此処を立ち去らずに居ましょう
自由詩
冬の高台にて
Copyright
塔野夏子
2010-11-21 21:26:14