雨の奢り
月乃助
さかな色の、光が
夜の道を跳ねる
記憶にふる 蒼い雨の想い
街灯の光りは、やすらぎの
七色を生むこともない孤独に満ち
つめたい 明かりを揺らす
力尽き 腐植し始めた黄葉に
訪れる追憶は、
…雨の、せいなのですね
枯れ葉をうつ雨音に耳を澄ませば
海のむこうに生きる人
君はどうしているのですか
奇跡が起こるのをまっていた
やわらかな運命を せつなく夢見た頃
あこがれを見上げては、手を伸ばした日
人の間で不器用に振舞うことも
飲み込んだ声を張り上げることも
なんでもなかった
二人の
数えたりない夜のどれもが、
けして間違いなどではないと信じていた
背もたれを失った
夜の椅子に座るような不安に
冷えた体で佇めば
風に弄ばれる
空き缶の転がる音は、悲しげに
置き去った過去を鳴り刻む、
眠りつく雨の街に、濡れ鼠の夜
もう差し出すなにもなくて
もう受け取るなにもなくて
辿り着くことのなかった夢
不埒な足音をさせる 危険を犯しながら
君は今も歩いているのですか
それを、後悔する事など
考えもせずに