かけら
木立 悟



朝と別の朝はつながり
声や水を憶えている
光や傷を憶えている
頬をかすめゆく小さな 小さな
見果てぬもののかけら かけら
定まらぬ世界をゆく定まらぬもの



水色と銀色
しんとした陽の陰
解かれることを望んで
世界は目をふせる



かけらは瞳に守られていて
気づかぬうちに守られていて



赤錆の上の紅葉
塔の根元にからみつく音
のぼりゆく音
三人の若者が
老人のように過ぎ去り
家々の間には
近づいてくる雨が見える



消えてゆく月 紙の魚
にじみ 点滅 曲がり角
鉱の笑い 響く道
雲は拾う
雲は見る



白 灰 鈍 銀
解かれてゆく世界の音
水の柱のなかの朝
まわりつづけ
ひろがりつづける輪に向かい
見果てぬかけらの手をのばす






自由詩 かけら Copyright 木立 悟 2004-10-25 17:10:40
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