思うようには、いかないもんだ
番田 


蛙が跳ぶのを見つめながら
小川の脇を歩いていった
トンボが飛んでいて
今日の景色は 神秘的でいて 美しい
私は煙草を吹かして
喫茶店の中で 眠る
古くからある 線路を 子供が通り抜けていく
私は その姿に 慣れ親しんでいるけれど
大学の友達はこの姿を知らない
大学の友達は 女の子と 戯れていて
私の声にも頭を貸さないようだった
今日は男とどこに行くのだろうかと
私は彼女の姿を いつまでも見つめていた
そうしていれば不幸せなのだろうと
買ったばかりの パンを 口にくわえていた


帰り道を 歩きながら
鶏の住む道を走り抜けて
私は どこに行くとも 知れず
口笛を吹きながら立ち止まっている
詩に 書くべきことなど 忘れて
自由に生きられたなら 幸せだ



働いて凍えきっている思いを 歩きながらどこへいくのか
母の言葉をヒントのように 引きずりながら
棺桶の中へとゴトゴトと 引きずりながら
今日も 晴れた夜の空の下を
私は覚えている 言葉も忘れて どこに行くのだろう
雷の鳴る道であっても
上を向いて立ち止まることを苦痛とも思わずに
時には 自転車を 漕ぎながら
失敗した サザンの歌を歯がみしながら
レミオロメンの姿を 思い浮かべながら 歩いていく
佐野元春の沈黙ぶりを
ジャネットジャクソンの 鮮やかなダンスを
ブルーズスプリングスティーンのぼやくような言葉を
思い浮かべながら 公園で 菓子パンを千切っている
小学生に言葉を投げ返して
失業者なのに ゲームセンターに 入り浸りながら
応募した会社からの手紙を待ちわびている
指をくわえながら 待っている



遠くのアスファルトの剥がされる工事の声がする
私には とてもできない 作業だ
私にできることと言えば家の掃除や
エクセルの線作りや
チラシのポスティングなどといった 作業だろう
今日も部屋で 鮭を 焼きながら
そこに 焼き付く 強い光を見た
私には それは強すぎる光だったから 目を伏せた
鮭の体を焼く文明の力が そこに 働いていた



人は今日の レールに立って
知らない街を訪ね歩きながら
知らない自分を 訪ね 歩く
そこに自分がいるのか 知らないけれど
私の求める姿ではないのかもしれない



自由詩 思うようには、いかないもんだ Copyright 番田  2010-11-19 03:19:15
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