一昨日
セガール、ご飯ですよ
一昨日の昼に雨ん中道を歩いていたんだよ俺は
したらお前、道端に路駐したイエローのシエンタな
そっから変な顔いろの悪いおっさんが声かけてきてな
なんかそいつ時計の営業やってんだけど発注ミスしてな
高級腕時計ローレックスを1個余分に発注しちまってな
このまま会社に持って帰ったら自分の責任問題になるが
今だったらまだいくらでも帳簿を誤魔化せるもんだから
そこを歩いてる兄ちゃん、ってぇのはつまり俺んことだが
兄ちゃんどうかここだけの話ってことでひとつ
この市価53万円相当のローレックスをロハでくれてやるから
その代わりと言っちゃなんだが今晩の飲み代をひとつ
なにせこんなつまんないミスして心が沈んでいるからして
今晩パーッと飲み明かしてなにもかも忘れてしまいたい
そこで兄ちゃんこのローレックスと引き換えに飲み代をひとつ
1万2万よこせってぇんじゃねえほんの2、3千で構わねえから
この哀れなおっさんに恵んじゃくれねえか、って
まあ要するにあれだよ腕時計詐欺ってぇやつなんだけどよ
でもな、俺は無職でそん時財布に206円しかなかったわけだ
それであれだよおっさん そこのドラッグストアにでも行ってよ
元禄美人って銘柄のそこそこうまい合成清酒の200mlパックがよ
ひとつたぶん100円くらいで売ってるからそれでもいいかって
そう言ったらあの野郎 急に真面目な顔しやがって
なに、兄ちゃん 本当に無職で働いてないのかい
それだったら一刻も早く就職をして働いたほうがいいよ、だなんて
もっともらしいこと言ってそのまま言っちまいやがったんだよ詐欺師のくせに
雨んなかに俺ひとりそれで取り残されてどんな顔したらいいわけ?